「演技は完璧を目指すものじゃない——実践から学んだ本当の芝居」

【舞台で活躍する俳優さんにインタビュー🎤】
芝居について悩んでいたとき、舞台で共演した俳優から「このワーク、いいよ」と勧められ、受講を決めました。
「すぐ芝居だから。台本持たないよ」そう聞いて、セリフを覚えるのが苦手な自分はかなり不安な状態で参加しました。
「じゃあ、やってみよう。今日初めてのシーンだし、セリフは…まあ、いつも通りで」
有薗さんの言葉に、正直かなり緊張しました。
「みんな、セリフちゃんと入ってるのかな…?」
長ゼリフはないけれど、会話が行ったり来たりする作品で、覚えにくいと感じていました。
でも、迷っている間もなく「最初にやってみて」と言われ、即実践。
いきなり本番、その緊張感たるや。
緊張のあまり、セリフが全然出てこなくて…。
でも、相手役の方は嫌な顔ひとつせず、なんとかセリフを繋げようと芝居をリードしてくれました。
普通ならストップがかかってもおかしくない状況。
でも芝居は止まらない。続いていく。
それに耐えきれず、思わず自分で止めてしまいました。
「セリフがわからなくなりました…」
すると、有薗さんがこう言いました。
「本番だったら止められないよ。」
実践とは、そういうことなのか。
自分の甘さを痛感しました。
さらに、続けて言われた言葉が、今も忘れられません。
「わからなくなってもいいんだよ。初めて合わせるシーンなんだから。完璧にやろうとすることが違うんだ。ここは、家で考えてきたことを披露する場じゃない。“演劇”が見たいんだ。」
正直、そのときはすぐに意味を理解できませんでした。
覚えたセリフ、考えてきた演技プランを持って、相手と芝居をする。
それが「演劇」なのではないか?
でも、何度かワークを受けるうちに、その言葉の意味がわかるようになりました。
セリフを覚えなくていい、考えなくていい、ということではありません。
むしろ、セリフとは一言一句向き合い、家でさまざまな可能性を考えることが大切。
だけど、相手と芝居を交わすときは、すべてを忘れて「今」に集中する。
そして、「これ試してみよう!」と思った瞬間を逃さず、勇気を持って試してみる。
それこそが、生きた演技なんだと気づきました。
これまで、形から入り、演出家の求める「正解」を目指して芝居をしていました。
でも、それでは本当の演劇にはならない。
ワークを通じて、その壁を乗り越えられたことは、自分にとって大きな成長でした。
この変化を体感できたことに、心から感謝しています。