感覚と感性の違い―俳優が芝居に向き合うとき、大切にしたい視点―

演技において「感覚を使う」「感性を磨く」という言葉はよく聞きますが、
この2つ、似ているようでいて、決して同じではありません。

感覚は、“いま”の身体の反応です。
たとえば、空気の温度を感じる。目の前の相手の声のトーンを受け取る。
相手の表情を見て、思わず息を止めてしまう――
それはまさに、瞬間的に湧き上がる身体の反応=「感覚」です。

一方で、感性は、“これまで”の積み重ねでできているもの。
経験や思考、価値観、育ってきた環境、見てきたものすべてが蓄積されて、
「自分はこう感じる」「こう受け取る」といった反応に表れる。
それは、その人だけが持つフィルターのようなものです。

では、芝居で必要なのはどちらか?

答えは、どちらも必要。でも混同してはいけない。

演技中、「自分はこの役をこう感じる」と感性で決めつけてしまうと、
その場の空気や相手とのやりとりに、感覚で反応できなくなることがあります。

芝居は、今この場で起きている“感覚”にいかに正直でいられるか。

そのうえで、役の背景や人物像を立ち上げるときには、
自分の持つ感性を使って想像を膨らませていく。
そうして生まれるのが、“自分にしかできない芝居”です。

「感覚」を止めない、「感性」に閉じ込めない

演技とは、決めつけず、止めず、開いていく作業です。
感性を豊かに持ちながらも、瞬間に反応できる感覚を信じる。
その両方を使って、役とともに生きること。

有薗芳記による演技実践ワークでは、
まさにこの「感覚」と「感性」の両方にアプローチし、
芝居を“模倣”から“実感”へと深めていきます。

ご興味のある方へ

少人数でじっくりと、自分の芝居と向き合いたい方におすすめです。

▼見学・受講申込みはこちら